研究概要 |
「日本の診療報酬制度における看護サービスの経済的評価」を検討する目的で,経済財としての看護サービスの歴史的変遷からその経済的特性を明らかにし,次いで,日本の診療報酬制度の歴史的経緯をみていく中で,看護サービスの経済的評価の価値規範を判断していく基軸となるものを明らかにすることを目的とした。 1.看護サービスの経済的特性については,訪問看護のルーツに当たる派出看護婦の活躍した時代から現在に至るまでの経済財としての看護サービスの歴史的変遷に基づき,看護サービスという経済財は公共財・私的財の両面をあわせもつ複合財であり,その経済的特性は多元的であるという点を明らかにした。 2.診療報酬制度における「看護料」点数は,看護独自のサービスの対価として設定されたものである。しかし,看護業務のうち診療の補助等にかかわる看護サービスの対価は個々の診療行為の点数の中に埋没し,看護独自のサービスにかかわる部分の価格は不明確であり,そうした価格を特定することの困難性を問題点として明らかにした。 3.医療・看護サービスが本来的に公共財か私的財かは考えの分かれるところである。しかし,公共財として提供される社会的共通資本としての看護サービスを考えるときの基本は,すべての人々の健康の維持・増進とQuality of Lifeを最低限まず保護するという患者,すなわち,消費者側に立った公平性・公正といった価値規範が必要であるとの考えを明らかにした。 看護サービスの経済的評価の価値規範を判断していく基軸となるものを明らかにする点については,今後,実証的データによる解析も加えた上で更なる検討を重ねていきたい。
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