研究概要 |
1.本研究によって,対象-看護者関係評価尺度(Client-Nurse Relationship Scale,CNRS)(深井と杉田,1994)は単に患者-看護者関係だけでなく,その他の微妙な人間関係を測定できる精度を持つ,信頼性と妥当性の高い測定用具であることが確証された。 2.冷刺激で生じる痛みの閾値は,人間関係が成立している場合にはそうでない場合よりも高い傾向が示され,冷刺激による耐痛閾値は人間関係に影響を受ける可能性が大きいことが確認された。また,冷刺激によるストレス誘発鎮痛時に,血中のACTH,β-エンドルフィン,アドレナリン,ノルアドレナリン濃度が一時的に増加していることが分かった。被験者-実験者間で人間関係が成立している場合,この傾向が強いことが示された。 3.電気刺激の耐痛閾値は男子が女子より高い傾向が認められた。実験者との人間関係が異なる女性の二群間では耐痛閾値の有意差はなかった。人的相互作用の密なケアほど自立神経反応が大きいこと,人間関係が成立していない看護者や異性看護者によるケアを受けているとき患者は緊張状態にあることが,局所発汗量と心拍数変動に現れた反応から明らかになった。また,人間関係が成立している二者間ではそうでない二者間よりも看護的鎮痛技術の効果が大きいこと,さらに,異性の看護者から受けるケアは同性より効果的である可能性が示された。 4.今後は,慢性痛のある人とそうでない人の閾値と看護的鎮痛技術の効果を比較検討する。また,慢性痛のある人でそれらの性差,人間関係による差を比較し,痛みが生活に及ぼす影響を探求する。
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