研究概要 |
前年度に製作した動摩擦力測定装置を用い、摩擦子の移動速度を1.0〜20mm/sec、静摩擦加重を5〜50gfの範囲で変化させ、60種類の新合繊布試料および6種類のレギュラー布試料を対象に測定、解析を行った。平均摩擦係数(MIU)は2つのパラメータの変化に対し、個々の試料それぞれ異なった変化を示すことが分かった。得られた動摩擦力の時系列データをフーリエ変換し、パワースペクトルに-変換して周波数分析をおこなった結果、個々の試料それぞれに特徴的なスペクトルパターンが得られ、またパラメータの変化に対し、スペクトルパターンにも変化がみられた。MIUおよびその変化パターン、摩擦力のスペクトルおよびスペクトルの変化は、試料布の織り構造や糸および糸を構成している繊維の構造、またその集合状態を反映していると考えられ、また手触り感と深い関わりがあるものと推定された。周波数0の成分であるMIU、および布表面のランダム性によって生ずる、2, 4, 6[mm^<-1>]のピーク強度を変数としてクラスター分析を適用し、試料布の分類を試みた結果、官能検査の結果で差異が明瞭な30サンプルを対象とした場合、形成されたクラスターと官能試験による分類結果の間によい一致がみられた。同様のクラスター化をすべての試料を対象としておこなった場合には、分類にばらつきが生じたが、圧縮レジリエンスを変数項目に加え、さらに各変数に適当な重みを付けてクラスタ化することにより分類が改善された。以上動摩擦力のスペクトルパターン、圧縮レジリエンスを変数としてクラスター分析をおこなうことにより、布のもつ微妙な手触り感を物理測定により差別化し、分類する手がかりが得られたものと考える。
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