平成7年度から9年度の3年間、幼稚園の1クラスを対象に、参加観察法により幼児の笑いの記録を縦断的に採集し、遊び場面を中心に焦点を当てて考察した。その結果次のことがわかった。 笑いの出現する遊びの記録を時間経過に沿って見て行くと、はっきりと子どもたちの園生活での成長が見て取れること。特に、保育者および子ども同士の人間関係面での発達および知的な発達についても一定追跡できることなどである。 作成した観察記録を、笑いの内容に即して、(1)からだ・自然にかかわる笑い、(2)知的認識に関する笑い、(3)人間関係にかかわる笑いに大きく分類した。からだ・自然に関する笑いでは、水とふれる時の笑い・食べることに関連するもの・おんぶだっこなどの直接接触・性意識に関連したもの・運動時の笑いに分類し、それぞれを3歳児から5歳児までの変化を見た。知的認識に関する笑いは、遊びに関連した知的な発逢を示唆するものであった。ものがわかる・自分の思いを形にする・ごっこあそびの楽しさ・ストーリーを作る・予想や予測を楽しむ・ゲームを楽しむ・おかしさを楽しむなど、知的な発達が示唆されるものであった。この部分については、さらに構造的な考察が可能である。人間関係に関する笑いでは、対保育者・対子ども・対自分という3つに大きく分けた。園生活では、まず保育者に親しみ、保育者に支えられながら何とか遊びだし、そのなかで友だちの存在に気づいていくという段階を経る。さらに、遊びの中で、友だちと心が通う体験もし、知的な発達を背景に遊びがさらに豊かになっていく。そのうちに、友だちに対する否定的な笑いも出現し始める。また。自分を見つめる笑いでは、よい自分であることが、自分にも周囲にも認められたときに出る笑いと、反対に、よくない自分であることに自分で気づいたときに見せる笑いがあった。笑いは自己受容の表現であることを再確認した。 さらに、事例研究として、笑顔の少ない2名の男児と1名の女児について記録を残した。
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