研究概要 |
本実験は、嗅覚系の上位中枢である大脳皮質におけるニオイ情報処理がどの様に行なわれているかを知るために、ラットを用い、嗅覚野といわれる前頭葉眼窩回におけるニューロンのニオイ応答を、純化学物質(テルペン類)とそれらを含有する複合物質(森林香気)および本能行動など生体にとって意味のある物質として主に餌につき調べ、ニオイに対する前頭葉眼窩回の応答特性を明かにすることを目的とした。方法としては、ラットを用い、前頭葉眼窩回の単一ニューロンの各種ニオイ刺激(純化学物質:α-ピネン、リモネン、ボルニルアセテート、カンファー、シネオールのテルペン,複合物質:ヒノキ、トドマツ、クスノキ,ユ-カリの精油,生体にとって意味のある物質:餌)に対するスパイク活動を、神経活動記録装置を用い電気生理学的に記録し解析した。結果として前頭葉眼窩回のニューロンの多くは自発放電が見られ(2Hz-10Hz)、それらニューロンの約40%がニオイ刺激に対して応答をした。その応答性は、以前筆者の調べた下位中枢の嗅球、梨状皮質に比べ低く、生体にとって意味ある物質の餌に対しても特に特異的な応答は得られなかった。また複合物質とその主な含有物の純化学物質の間で特に特徴的な相関関係も見られなかった。以上のことより、この部位における嗅覚情報処理機構は弁別性が低いことが示唆された。
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