藍染に用いられる染料である天然藍(すくもやインド藍)には、藍の色素成分であるインジゴ以外に、赤色色素のインジルビンやその他の赤色色素が含まれていること、これらを高速液体クロマトグラフィーで分離・分析できることがわかっているが、これらの色素は染色を行えば繊維にも染着する。そこで、それらの色素の染色布からの抽出方法と高速液体クロマトグラフィによる分析方法を確立した。 藍染の人気が高まっている現在、「正藍染」とか「天然藍染」とか称した藍染製品が市販されているが、それらが合成インジゴで染色したものであったり、合成インジゴを混ぜた天然藍で染色したものであったりすることも多い。目で見ただけではその区別はつきにくいが、天然藍に含まれている不純物としての赤色色素の量を分析すれば、天然藍による製品かどうかを区別できると考えられるが、合成インジゴによる染色布と天然藍による染色布に上記の赤色色素成分の有無に違いがあることがわかった。 インジゴは、藍植物中に含まれる、無色のインジカンと呼ばれる配糖体の加水分解によって得られたインドキシルの2分子が酸化的に結合して生成する。インジルビンは、その2分子の結合の際に、インジゴ分子の生成とは異なる様式でインドキシルが結合してできたものだと考えられているが、どのような条件で多く生成するのかを調べたところ、pH11前後を最高に、アルカリ条件で多く生成することがわかった。他の赤色色素の生成も、インジカンからインジゴができる過程で生成するのかどうかを、市販試薬のインジカンを用いて調べたところ、インジルビン以外の赤色色素は生成せず、別の過程を経ているのではないかと推察された。
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