研究概要 |
激しい連続性の筋収縮や伸縮性の筋収縮をともなう運動後には、筋構造の損傷を引き起こすことが知られている。この様な筋の損傷とその部位の修復が、筋線維タイプに関係するとした仮説を立てた。これは、(1)連続伸縮性収縮による筋の傷害((2)特に筋線維中心部の崩壊)がおこり、(3)神経筋接合部の解離、(4)軸索末端側枝の延長と再生支配が起こる。この過程で異なるタイプのα運動神経による多重神経支配、(5)余剰神経の消退による単一支配神経化の段階における筋原性(収縮様式の変化が影響)選択、(6)筋線維タイプの移行(決定)と進むと考えるものである。この(1)〜(6)にまとめた筋損傷から修復再生までの過程を生理学的・形態学的に調べた結果、以下の事実が認められた。Fischer344系のラットの下肢筋により、実験を行い、仮説(1), (2)に関しては、1)下り走後の筋横断面像より筋線維の崩壊像の確認され,2)筋腹部の縦断面像より運動終板近傍の崩壊像の確認された。(3)については、下り走後の筋に、関接刺激よりも直接電気刺激により大きな最大張力得られることから神経遮断の可能性がしめされた。(4)に対しては、TypeIIc線維の構成比増加の確認され,縦断切片に対するコリンエステラーゼ+硝酸銀2重染色による終板の複数存在および多重神経支配の確認された。(5)においても多重神経支配の継時的減少の確認され,損傷筋の回復過程に異なる収縮様式をさせた後の筋線維タイプ移行が顕著に起こった。さらに(6)の筋線維タイプの移行(決定)については、再生筋線維の証拠としての中心核存在が確認され、一方同タイプ筋線維のグル-ピング出現がいくつかの筋で確認された。これらの結果、損傷を起こした筋線維は、その修復過程における筋活動様式によりタイプ移行が積極的に起こる可能性が示され、このことは軸索終末の解離・再結合と関係していることが示された。
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