研究概要 |
最近の幼児は,背筋が伸びずよい姿勢が維持できない,腰関節が硬い,転んだ時に顔を打つ,集団の中でうまく遊べない,戸外での遊びが減っている,などの好ましくない現象が現れている.本研究では,これらの大きな変化がどのような要因によって起っているかを社会学的・生理学的両面から探求することを目的とした. 生理学的面からは,5歳男児43名について,園生活における歩数を43日間に亘って計測した結果,1日当たりの平均歩数の度数分布が2峰を示したことから,平均歩数の少ない群(25.8steps/min以下)を非活動群,多い群を活動群として分類した.両群の体格とBMIには差異がみられなかったが,筋力と運動能力の一部および足圧中心位置に有意な差異が認められた.筋力では,背筋力に,運動能力では立幅跳に両軍群で有意な差異がみられ,これらに差異を生じさせる共通の要因として,上半身の姿勢を調節する脊柱起立筋の活動の差異が最も大きいことが示唆された.この結果は,上記の最近の幼児に好ましくない現象が現れている要因を説明できると考えられる. 社会学的面からは,上記の同じ幼児を含め,6歳男児80名について,家庭での室内と戸外における遊びとその時間などについて調査した.この研究においても,生理学的面からの研究と同時に,対象幼児を非活動群と活動群に分類して,彼らの母親が回答したアンケート調査の結果を分析した.その結果,室内では非活動群がテレビ鑑賞などで長い時間遊んでいるのに対して,戸外では活動群が自転車などで長い時間遊んでいることが明らかになった.そして,戸外で遊ぶ場所として,両群とも自宅近くの公園が最も多く,また一緒に遊ぶ友達の数は2人が最も多いことから,集団遊びが少ないことを示唆した.この結果も,最近の幼児に起きている好ましくない現象の要因を説明できると考えらえる.
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