研究概要 |
本研究は,精密把握運動中の把握力調節に関わる中枢神経機能についてSPECT (Single Photon Emission Computerized Tomography)装置を使用して,局所血流量(rCBF: regional Cerebral Blood Flow)を測定した. 実験は2段階で実施され,実験1では,安静時,物体(重量:400g)を空間保持時,物体の繰り返し持ち上げ(降ろし)運動時について調べた.実験2では,物体重量が一定(400g)での場合と重量が200g,400g,600gの3種類がランダムに変化する場合について調べた.rCBFは123-IMPトレーサーを静脈より注入し運動中(10分間)のデータを収集した.rCBFの変化の統計的検定はSPM (Statistical Parametric Map)法で行った.また,把握力と把握力に関わる手指の筋活動も記録した. 本研究家ら,小物体の精密把握持ち上げ運動制御に中心的に関わる中枢神経系機構が明らかとなった.特に,一定重量を単純に持ち上げ保持する運動では対側の大脳皮質運動野と感覚野および補足運動野の重要性が明らかとなり,これまでのサルを用いた実験からの結果を支持するものであった.重量が不意に変化するような状況では指先からの重量情報に基づき把握力を素早く修正・調節することが必要となり,それに関わる領域として前頭葉連合野の帯状回の重要性が示唆された.
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