研究概要 |
(1)子どもは,暑熱・運動刺激に対し発汗能が未分化なため,若年成人に比し躯幹部の皮膚血管拡張に依存した熱放射特性を呈した。さらに,環境温が皮膚温より高くなると,子どもは前額で発汗および皮膚血管拡張を急激に亢進した。局所加温実験による子どもの最大皮膚血管コンダクタンスが若年成人より高かったことから(背と大腿),上記子どもにみられた皮膚血管反応特性には,部分的に皮膚血管の組織解剖学的年齢差も関与していることが示唆された。(2)寒冷刺激に対し,子どもは若年成人より四肢部の皮膚温を顕著に低下した。この特性は,手中指では皮膚血管収縮の亢進と大きな体表面積/質量(Ad/Wt)の両要因,大腿では皮膚血管の収縮亢進ではなく大きなAd/Wtと皮下脂肪厚の体格的要因に起因した。子どもはいずれの部位でも若年成人と同等の皮膚冷感覚点数を有したため,皮膚冷受容器数の年齢差が上記子どもの特性を生じたとは考え難かった。(3)暑熱刺激に対し,高齢者は若年成人に比し大腿と背で皮膚血管拡張能の低下を認めた。最大皮膚血管コンダクタンスの老化に伴う低下は,前腕でみられたものの背・大腿では認められなかったことから,上記皮膚血管拡張能の低下は皮膚血管の組織解剖学的変化より,皮膚血管の収縮神経や拡張系の変化により強く関連するものと考察された。(4)高齢者の寒冷刺激に対する皮膚血管収縮の程度は,前額・胸・手中指では若年成人と同等であったが,大腿・背では小さかった。このため,皮膚血管の拡張能のみならず収縮能も老化に伴い低下し,その低下に身体部位特性が存在することが示唆された。皮膚冷感覚点密度および部位あたりの推定総数には年齢差はみられなかった。(5)子どもではVO_2max,高齢者では日常歩行量またはVO_2maxが,暑熱・寒冷時の皮膚血管反応と関連した。そのため,子ども・高齢者ともに運動習慣の確立が皮膚血管調節能の改善に有効な手段になり得る可能性が示唆された。
|