研究概要 |
本研究は,高温環境(30℃)や低温環境下(10℃・0℃)において効果的なウォーミングアップ(以下W-up)強度および時間について,人工気候室を用いて検討した。同時に,夏季種目として陸上競技の中・長距離種目,冬季種目としてクロスカントリースキーおよびボブスレ-競技を対象として,W-upの実態について調査した。実験からは,高温・高湿度下における高強度のW-upは,主運動に対してマイナス要因となる可能性が大きいと思われた。しかし,高温・低湿度の場合には,その影響が小さかった。日射のある場合は体重減少量が多く,運動効率が低下する可能性もあり,W-up前から十分に給水することが望ましいと思われた。低温下においても,W-upは低強度で実施したほうが望ましく,高強度の場合には発汗量の増加により,皮膚温と深部温との温度差を大きくする可能性があると思われた。主運動の運動形態が,ある程度の時間で継続されるような運動種目では,高温,低温下のいずれにおいても,W-upは低強度で実施すべきであり,高温下では短時間に,低温下でもあまり長時間にならないように注意すべきであると思われた。陸上競技の中・長距離種目の夏季競技会では,かなり長時間のW-upが行われており,過度の体温上昇とW-upによる疲労が懸念された。ボブスレ-におけるW-upでは,ブレーカー,プッシャーともに過度の体温上昇と休息による体温の低下,さらに疲労が懸念された。またドライバーにおいては,外国選手との比較で最も長時間であり,疲労が懸念された。クロスカントリースキーにおいては,種目によってW-upの強度と時間が異なっていたが,競技までの休息時に体温の低下が大きな場合も見られ,休息方法に対する注意が必要と思われた。スポーツ現場におけるW-upは,かなりの長時問で実施されており,夏季では疲労と高体温,冬季は疲労と休息時の体温の低下がパフォーマンスを低下させる可能性があり,問題として指摘された。
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