研究概要 |
1.研究目的:本研究は,本態性高血圧患者が運動療法(Ex)および運動と薬物(Drug)を併用(Ex+Drug)した場合の降圧効果,その他のmerit, demeritを明らかにする目的でなされた。 2.研究方法:ヒト本態性高血圧のモデルとして7週令の自然発症高血圧オスラット(SHR)を選び,各々6匹づつEx, Drug, Ex+Drug群および安静対照群(Cont)の4群(合計24匹)に分けて16週令まで飼育した。運動は,自発運動ができる回転ケージ(シナノ)を用いた。回転数の記録から,走行距離を算出した。血圧は,1週間に1回づつtail-cuff法による実験動物用非観血的自動血圧測定装置(BP-98A,ソフトロン)を用いて測定した。降圧剤としてACE inhibitorカプトプリ-ルを用いた。予備実験による飲水量から推定して1日体重あたり3mg摂取されるよう水道水に溶解して投与した。飼料は粉末(CE-2;日本クレア)とし,自由に摂取させ残量を秤量し,1日あたりの摂取量を算出した。飲料も自由にし,飲水量を計測した。最小秤量1gの秤量器を用いて週1回,血圧測定時に体重を測定した。尚,飼育期間中は朝6時から夕方6時までの12時間を明期,他を暗期とし,飼育室温は23.0±2.0℃(湿度55〜70%)に維持した。尚,諸計測はすべて明期の午前10〜12時の間に実施した。16週間飼育終了後にネンブタール麻酔下で放血,屠殺し臓器重量を測定した。ヘパリン採血した検体を用い,血液学的成分(RBC, WBC, PLT, HCT)および生化学的成分(TC, TG, HDL-C, 尿酸,アルブミン,その他)を測定した。 3.研究結果および考察:6週令の体重は平均162.0〜169.3gで4群に差はなかった。実験初期(6〜8週令)の収縮期(SBP)および拡張期血圧(DBP)には4群間に差はなかったが,実験3週目以降,ContおよびEx群は漸増し,DrugおよびEx+Drug群はほとんど変化はなく,16週目のSBP/DBPは,それぞれCont群216.0/172.7,Ex群226.5/176.8,Drug群167.6/136.5,Ex+Drug群163.5/127.6mmHgであった。自由運動のみによる降圧効果はまったく認められず,SHRの降圧効果はカプトプリ-ルのみに認められる,と結論される。しかし,Drug群とEx+Drug群間の体重あたり心臓および腎臓重量には差がなかったが,前頚骨筋,ヒラメ筋重量は多い傾向にあった。 4.結論:以上の結果から,運動と薬物療法を併用しても腎や心臓への負担は多くならず,しかも運動によって筋量が増すことが示された。さらに,血液学的,生化学的成分測定値からは運動と薬物療法併用のdemeritは指摘されなかった。
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