研究概要 |
1970年代における南部の人口増加,人口移動,就業者の増加,所得水準の変化を南部の特性や歴史的背景と関連させて検討し,さらに1980年代以降に顕著になった経済発展の地域差を工業化,サービス部門の発展,農業の変容,所得水準の側面から考察した.その結果は以下のようにまとめられる. (1)合衆国南部は1970年代に合衆国平均を上回る高い人口増加率と就業者数の増加を示して,所得水準が上昇しサンベルトと呼ばれるようになった。 (2)1980年代に入ると,南部の所得水準が上昇したため農村部の低賃金労働という比較優位性が低下し,農村部における雇用者数の伸びが緩やかになった.大都市圏の郡ではハイテク産業関連の新技術産業やオフィス業務が進出して経済発展が続き,経済発展の地域差と分極化が目立つようになった. (3)経済発展の続いている郡の多くは大都市圏(MSA)と地域的中心都市の都市圏に含まれる.これらの郡は,郊外化,郊外化に伴う各種サービスの業の進出,郊外居住者を労働力とするオフィス業務の増加,中心都市からの工場の分散および新設工場(分工場)の増加などにより就業者が増加し,所得水準も上昇した。 (4)一方,経済発展が停滞しているアパラチア山地地域,大西洋汗顔平野,ミシシッピ・デルタの郡の多くは農村地域であり,所得水準が低い.これらの地域は都市圏から離れたところにあるため,通勤兼業が困難であり,農外所得を求める機会が少なくて所得水準の上昇が遅れている。 (5)1970-80年にこれらの農村地域に進出した労働集約的な製造業は外国との競争に直面することになり,農村地域は非農業部門の就業者の伸び率が低下して経済発展が停滞している.
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