研究概要 |
本研究は、ある特定地域の生活の質(Quality of life,QOL)を評価する場合には,当該地域のみならず隣接する地域のQOLを構成する指標をも考慮する必要があるとの基本的認識から、近接性を考慮したQOLを評価する方法を提案し,これを愛媛県70市町村に適用し、近接性を考慮した場合と考慮しない場合のQOLを求めた。さらに、70市町村の居住選好順位のデータから居住選好度を求め、2種類のQOLとの対応関係を考察した。 その結果、近接性を考慮した場合のQOLのパターンは、考慮しない場合のそれとはかなり異なること、特に松山市などの中心都市周辺地域でのQOLの評価の向上が顕著であることが明らか、となった。さらに、近接性を考慮したQOLは、考慮しない場合と比較して居住選好度との相関が飛躍的に向上することが判明した。この結果は、個人はQOLを評価する場合には当該地域のみならず隣接する地域のQOLを構成する指標をも考慮していることを示唆していると考えられる。それゆえ、現代における自家用車の普及、それに伴う個人の移動性の向上を考えると、QOLを評価する対象地域が相互に隣接している場合には、QOLの評価に近接性を考慮する必要性があることが明らかとなった。
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