研究概要 |
本研究では,東部ヒマラヤにおける降水の季節内変動の地域差を明らかにするとともに,それらとインド中部におけるモンスーンの季節内変動との関係を明らかにするため,ブ-タンヒマラヤを中心として日降水量の解析を行った.その結果,ブ-タンヒマラヤでは,シノプティックスケールにおけるモンスーン循環とローカルスケールにおける山谷風循環の両循環とブ-タンヒマラヤ特有の地形配列が日降水量強度の違いとなって,山麓から山間盆地にかけての降水量の急減に大きく寄与していることが明らかになった.さらに,東部ヒマラヤの降水量の時間変化に関して,モンスーンの開始から7月までの期間はインド中部のモンスーンの活動期に少なく,休止期に多いことが明らかになり,東部ヒマラヤとインド中部のモンスーンの季節内変動の位相には,逆相関が認められた.一方,8月以降になると,東部ヒマラヤの降水の季節内変動は地域的に異なるとともに,インド中部のモンスーンの季節内変動との間に明瞭な関係は認められなくなることが明らかになった. さらに,ブ-タンヒマラヤにおける1989年の大雨の原因を解析した結果,5月と6月に大きな被害を引き起こした大雨はブ-タン付近を通過したサイクロンによるものであり,その影響は,山麓地域より山間の盆地域で大きく,災害を引き起こしたことが明らかになった. 以上のことから,ブ-タンヒマラヤにおける降水の季節内変動の地域差,および他地域の降水の季節内変動との連関は,モンスーン期間の前半と後半では異なり,モンスーン期間全体で一様ではないことが明らかになった.また,ブ-タンヒマラヤの山間の盆地域では,サイクロンによる大雨に特に注意する必要のあることが明らかになった.
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