研究概要 |
初・中等理科教育の中での環境教育の実践においては,地球規模のグローバルな事象のみでなく身近な事象を取り上げることの重要性が増してきている.本研究では,地域の自然環境データに基づいて,人間と自然環境との関わりを考えるカリキュラムの構築に寄与するため,以下のようなデータベースを作成した. 1)気象情報の収集とそのデータベース化 気象現象は生活と密接な関連を持つため,児童・生徒の翌日の天気への関心も大きいし,毎日の生活の中で感じ得る身近な情報でもある.また気象情報は環境問題とも深い係わりがある.しかしながら,校庭で測定したデータだけから,気象現象の全体像をつかむことは困難である.そこで,リアルタイムでの気象衛星の雲画像(ひまわり,ノア,インターネット「ひまわり」の各データ)と地上実況天気図(気象FAXデータ)を活用し,典型的な気象現象の情報を収集した.また日本周辺の気圧と気温に注目し,それらのデータを経時的に各地点において,表示できるプログラムを作成した.これらにより,四季の気象変化を現象的に,なおかつ自分の学校の校庭での測定データを加えながら,把握することが可能となった. 2)地域植物検索システム 児童が環境教育などの活動中に見つけた植物について,容易に情報を得られる学習環境は,興味や関心を持続させるためにも必要となってくる.そこで,地域の植物を選定し,それらの形質をデータベース化した.植物種として,阿蘇(草原),熊本大学構内(平地),江津湖(湖沼)の3地域に共通してみられる植物を基本に選定した(284種).またそれらの植物の解説やビデオ映像もデータベース化した.これらのデータベースを一体として取扱うために,植物検索プログラムを作成した.プログラムは,児童・生徒の発達段階に応じて,検索項目数(22項目中)を任意に変更でき,視覚的に検索をできるように,検索項目の表示を工夫した.これらにより,小学校低学年でも利用可能である. 今後,これらの素材を「地域環境と人間社会」という視点から教材化を図り,付属学校での授業実践を通して,さらに改変しながら,環境教育教材開発を行っていきたい.
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