研究概要 |
本研究は次の2テーマに関して解明を行った。第一は小学校児童における説明文表現技能の発達的特徴,第二は成人におけるわかりやすい説明産出技能の規定因の検討,である。 第一に関しては,小学1〜6年生計173名を対象に,説明文産出課題と,自らが産出した文章の推敲課題を実施し,文章推敲技能の発達的変化を検討した。結果は,文章全体での推敲は少なく,20%以下であった。また,低・中学年では大半が単語単位の修正に限定されていたのに対し,高学年では句の単位の修正によって語の意味の変更を行っており,修正単位の拡大という発達的傾向が明らかになった。さらに,小学校2・5年生を対象に,手続き的知識を伝える説明文の表現課題を実施し,文章表現のわかりやすさと説明内容の先行知識量との関係を検討した。結果は,関係がみられ,知識量が違わない場合には2・5年生間でわかりやすさに差がないことが明らかになった。また,先行知識量が異なる2課題間で,個人内の産出技能が安定しないことも明らかになった。 第二に関しては,大学生を対象に,手続き的説明文の産出課題を実施し,説明内容に関する知識の程度と被説明者の知識レベルを知ることとの2要因について,いずれが規定因として重要かを検討した。結果は,説明内容の知識程度よりも被説明者の知識レベルを知ることの方が,説明文を書く技能の向上に対する効果が大きいことが示された。また,手続き的知識の説明(操作の指導)が口頭でなされた場合,実際の操作とともに操作の意味を伝えることが操作習得に重要であることが明らかになった。
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