1 「成立の背景と種類」-戦後初期の教科書事情がまだ混乱していたころ、北海道では、「北海道の実情を反映した教科書」の出現を待望する教師たちの悲願があった。というのも、北海道はその地域性から全国を対象にした教科書では季節の推移や行事などにおいて大きく異なる部分があったからである。こうした要求から生み出されたのが、北海道読本編集委員会編著「北海道読本」(昭和23年)であった。「北海道読本」は、昭和23年度を初版に、以後一年こどに改訂を加え、昭和27年度まで五版を重ねた。その代表的なものは、小学校版(小1〜小6、各上下2巻、計12巻)であった。が、一部には、中学校版(昭和25年度に中1と中2、いずれも上巻のみ)や、地方版(昭和25年度に石狩版小学校用、同年度に北見版も?)の編纂も試みられた。 2 [目的と内容]-「北海道読本」は、北海道を知らせることを第一義とした。北海道の自然・生活・産業を中心にして、アイヌの歴史と生活にも触れ、これらを説明文・童話・詩・伝記・紀行文の表現形式で記述した。 3 [活用法]-「北海道読本」は当初、郷土読本として、次いで社会科・国語科の生活単元の資料集として、そして国語科の副読本として定着していった。固定・検定教科書を補完するものとして、積極的に活用された。 4 [反響]-学習者からは「絵があってきれい」「厚くしていっぱいお話を」、教師からは「国定よりも子供をひきつける」「積極的に活用」という声ともに、「高くて買えない」「国定で精一杯」という声もあった。 5 [終焉]-昭27年度版が刊行されたころ、検定国語教科書に北海道版を実現させる方策が検討され始めた。それが現実になって、「北海道読本」の役割は終わった。こうして「北海道読本」はわずか30〜60ページの小冊子ではあったが、北海道の実態を反映した副読本として、北海道の国語教育に大きな役割を果たした。
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