研究概要 |
自然科学、社会科学、人文科学の諸領域では、2つの変数セット間の関係を分析する需要が大きい。冗長性分析(redundancy analysis,RDA)は、変数セット間の関係を分析するために、近年開発された手法である。RDAの応用例は少なく、その評価は定まっていない。本研究は、RDAの有用性を評価するために、様々な領域の多変量データに適用して、応用研究を行なった。また現状のRDAを、一般化した新しい手法を開発し、その評価を行なった。 方法論的研究 従来のRDAは数値データのみを扱うが、数値データとカテゴリカルデータが混在した多変量データを分析する必要は多い。このために、尺度混在データを扱う新しい手法(QRDA手法)を開発した。また説明変数群が退化した場合も、分析可能にする機能を組み込んだ。新手法を評価するために、人工データに基づいて、数値実験を行ない、新手法が実用性をもつことを確かめた。 応用研究 3種類の現象解析を行い、RDAの有用性を評価した。第一研究は、教育データに適用し、高校調査書と共通試験の関連性について分析した。共通試験よりも、調査書の方が広い領域を測定していることが見い出された。この知見は、従来の多変量解析法の適用よりも、RDAの応用する方が明らかであった。第二研究では、ガードルの着用感が、その素材物性に依存する従属関係を、RDAにより分析した。着用上の心理的な拘束感は、物理的に布地のパワーに依存し、またなめらかな着用感は、物理的に布地の触感に依存することを見い出した。第三研究では、悪臭の心理データの分析に、QRDA手法を応用した。悪臭の官能評価は主として,不快性と刺激性に依存し、不快性に寄与するものは,硫化物,酸類,アミン類を示す官能基であり,刺激性に寄与するものは,酸類であることがわかった.これよりQRDAの有用性が実証された.
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