研究概要 |
先ず、ある地域で連発の地震が起きたときその発生時刻・位置・マグニチュード差に関する情報や最初の地震の発生位置を使うことによって,群れの型(特に前震型)をできるだけ有効に確率予測するような統計モデルを考えた。これにより,推定に使ったデータとは異なる新しいデータに対して確率予測を行うと,おおよそ一%〜二十%の変動が見られた。この確率予測の有効性は相対エントロピーの比較や分割表のAlC比較によって示すことができた。 第二に,震源精度が十分改良されている最近の気象庁地震カタログから30例の余震データを抽出して,余震の統計的経験則から導かれたフラクタル次元D,改良大森公式およびETASモデルのp値,マグニチュード頻度分布のパラメタb値などの時間・空間・マグニチュードに関する諸特徴パラメータ間の相関の有無を調べ,余震活動に関する一定の知見を得た。 第三に、地震活動計測用点過程ETASモデルの時空間データへの拡張を試みた。余震発生の空間の広がりについての経験法則として宇津・関の公式があるが、これに関して更に踏み込んだ統計的な仮説が考えられるが、時空間点過程モデルの比較によって次のような結果が得られた。それらは、余震の分布は従来から考えられているような確固とした有界(コンパクト)な領域内に限られているもではなく場合によってはかなり遠方にも影響を及ぼすもので、空間的な広がりのスケールはマグニチュードに関して指数関数として表現されるものが最も優れているということである。この結果は地震の活動度が地域的に異なる場合(non-homogeneous)にも余震の空間分布が本震について非等方(non-isotropic)な場合でも変わらないことが分かった。これによって地震活動の時空間モデルとしての実用的な形が定められた。 第四に、この時空間点過程モデルを東北地方東方沖地域や日本周辺の地震活動(1926-1997)の震源カタログにあてはめた。この結果得られた時空間発生強度を使って予測した地震活動と実際の地震活動の差を見るAVS3次元可視化プログラムを作成した。この結果、本震のマグニチュードの割に余震活動の高いものや群発地震が時空間画像として明確にあぶりだされた。しかし、相対的静穏化のような微妙な変化をとらえるためには、この「地震活動の差」の3次元画像は時間や空間のウィンドウの取り方によって異なってくるので、現在デロネ分割による客観ベイズ法を開発中である。
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