研究概要 |
本研究は、複数の結合演算を主とする複雑な問い合わせに対する並列処理化とその最適化について考察し、与えられた並列環境の中でその計算機資源(プロセッサ数、メモリ容量、ディスク数)と対象となるデータの大きさ、データの分布などから最適な処理性能が得られるように動的に処理を各プロセッサに割り付けることで、並列処理効果をより高める最適化技法を開発することが目的である。つまり、従来の静的情報だけでは正確に予測できない中間データの大きさ、プロセッサ間の処理負荷の偏りを実行中に検知し、すでに生成されている処理スケジューリングを再検討し、リスケジューリングを行なうこととなる。本研究では、静的な情報から最適処理スケジューリングをいったん生成し、動作時における処理情報からさらに動的な再処理スケジューリングを行なうことにより、従来と同程度のスケジューリングオーバヘッドでありながら実行するシステムに適合し処理スケジューリングを得ることにより、実行時システムに適合した極めて高い並列処理効果を得るものである。 本研究では,まず、複雑な問い合わせの静的情報に基づく処理スケジューリング方式を構築するため、並列データベースシステムの問い合わせ最適化処理のキ-パラメタとなる、実行時に動的に変動するパラメタを検討し、効率の良い並列処理性能を得るための要件を考察した.さらに,並列データベースシステムにおける問い合わせ処理最適化技法の設計して,複数の結合演算の問い合わせを対象とし、実行時に生じる各プロセッサ間の負荷の変動を反映することが可能な木構造を生成するような静的な最適化技法を設計した。さらに並列計算機の環境を充分反映し、並列データベースシステムに特化したシミュレータの作成を開始した.平成8年度は,並列データベースシステムに特化したシミュレータを開発し、現状の並列計算機およびそのさまざまなアーキテクチャを反映したパラメタを与え、基本的な動作の確認を行った。さらに、昨年度提案した問合せ最適処理技法による最適処理スケジューリングを本年度開発したシミュレータ上で実行し、従来提案されている静的最適化技法ととの性能比較を行なった。その結果、実行時に生じる各プロセッサ間の負荷の変動を反映することが可能な木構造を生成するような静的な最適化技法を用いることで、並列計算機上で動的負荷変動に対応可能であることが確認された。また、並列計算機のパラメタを変化させることで、特に負荷の偏りの影響を受ける非共有型計算機上での提案する方式の有効性が確認された。
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