研究概要 |
本研究は低いレベルの計算量クラスの完全問題における基礎となるものである。様々な離散的な問題について、その効率的なアルゴリズムの開発と、アルゴリズムのクラスに関する定性的および定量的な解析を行っている。 笠井は自然言語処理における様々な問題を形式化した。そこでは、構文解析木の新しい表現方法である「左右木」という概念を導入し、その概念を用いた構文解析のアルゴリズムのクラスについて議論した。また、言語の変換理論に関し、二段階木変換機というアルゴリズムのクラスを定式化した。一般に、言語の変換は、木を木に変換する木オートマトンの形で定式化され、これらの変換を何度も繰り返し適応し、最終的な出力が得られる。我々の得た結果は、こういった複雑な変換が、二段階変換の1回の適応で実現できるというものである。 研究分担者の岩田は、マージング・ネットワークの比較器の個数に関する研究を行い、これまで知られていなかった、M(6,6)=17を理論的証明により、M(4,5)=12、M(4,6)=14、M(4,7)=16、M(4,8)=17、M(4,7)=16、M(5,6)=16を効率の良いアルゴリズムを開発し、コンピュータで計算することにより、求めることに成功した。山崎は、グラフアルゴリズムの解析を行った。最大次数、木幅などをk以下に制限したグラフのクラスに対する同型性判定問題に対し、O(f(k)n^c)時間のアルゴリズムの存在性は未解決問題であった。山崎等は、そのある部分クラスに対しO(f(k)n^c)時間のアルゴリズムが存在することを示した。また、与えられたグラフに対し、独立点集合を求める貪欲アルゴリズムが効率良く働くか、すなわち、サイズが最大ものに近い解を出力するか否かを判定する問題は、co-NP完全であることを示した。谷は、質問による学習における質問数計算量の解析を行った。
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