研究概要 |
都市空間をナビゲートする際に手がかりとなる情報を観測と実験結果に基づいて分析し,景観情報や都市の空間構造が果たす役割について考察した. 1.歩行者の行動を観察し,ナビゲーションの手がかりを何から得ているかを分析した.交差点では各道路に沿う景観の印象が道路選択の重要な情報を与えることが判明した. 2.街路シーンから各種の情報を削除したものを被験者に提示して視点位置とその方向を回答させた.一点透視図型のアングルで位置の正答率が高く,被験者は見ている空間の構造により位置を同定していると考えられた.また特徴的な形の建物からキ-となる情報を削除すると誤りを生じ易いとことが判明した. 3.街路に沿って進む視点からの動画像を被験者に提示し,場所を同定させた.画像にはマスク処理やぼかし処理を施したものも加えた.この結果,位置同定には主に建物の空間的配置,色彩等が利用され,景観情報の全体あるいは一部が欠落するとその度合いに応じて解答時間が増加し,正答率が減少した.動画の方が正答率は高いが,回答時間には差がなかった. 4.コンピュータ上に仮想的な都市空間を構築し,そこでのタスクを与えられた被験者の行動を記録した.その結果,進行方向の視界を遮る構造は行動のための情報として有効だが迷うとリカバリーが難しいことがわかった.被験者の行動から異なる3種の経路探索法が抽出された. 5.江戸図上の縦断的,横断的ナビゲーションを支援するために,多数の江戸図を方位と縮尺の正しい地図へリマップして,それらを重畳表示する手法を提案した.また街路景観をコンピュータ上に表示して江戸の街のウォークスルーを可能にした.
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