研究概要 |
本研究の目的は,例による学習の理論モデルである帰納推論の研究を通して,機械学習の実現可能性を探ることにある.一般に,学習に用いられる例は,正のものと負のものに分類できる.言語(文法)の学習においては,正の例は,(文法的に)正しい文に相当する.実験から得られるデータのうち,ある形質などに関連すると判断・分類されるものは,その形質を説明する正の例と考えられる.本研究では,正例のみに基づく帰納学習の原理的限界を解明するとともに,実際の応用の観点から効率的帰納学習アルゴリズムを探究していく. 帰納学習の対象であるパターン言語の組,および基本形式系(Elementary Formal System)について,平成7年度の研究で,パターン数や公理数を有限個に制限することにより,正例からの学習可能性について肯定的な結果が得られた.平成8年度の研究では,パターンの形に制限を加えることにより,パターンの任意有限個の組についても,正例からの学習が可能となる場合があることがわかった.パターンとは,定数記号と変数からなる文字列であるが,各変数が2回以上出現しない正則パターンに制限し,さらに定数記号連続する長さをある定数以下に制限すると,そうしたパターンの組が定める言語の和を正例のみから学習できることがわかった.
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