研究概要 |
本研究は,ソフトウェアに含まれる本来的な情報を,ソフトウェア開発保守のさまざまな局面とは独立に,概念や関係の要素とその組み立てとしてとらえ,これをソフトウェア生産の計算機支援に役立てることを目的として行なった.このような局面に独立な概念/関係要素は,ソフトウェア表現の抽象度,粒度に関係なく普遍的に存在するもので,その意味でこれをメゾソフトウェア要素と呼ぶ. 本研究ではまず,メゾソフトウェアのモデルとして「ソフトウェアクォークモデル」を確立した.その最も基本的な概念要素は,能動性と受動性,瞬間性と持続性という2つの二元性に基づく,イベント,データ,ファンクション,アクションの4種の「ソフトウェアクォーク」である.関係要素はこれら4種クォークの2項関係から系統的に導かれ,(1)ファンクションのイベントやデータに対する基本的作用,およびファンクションやアクションとデータとの結合,(2)値と型の構成,(3)条件の構成,(4)条件と能動的要素の組合せ,(5)データやファンクションの構造,の5つのカテゴリの22種類の関係要素を設定した. 次に,このソフトウェアクォークモデルに基づくリポジトリが提供する一貫性管理やトレースなどのサービスの有効性を確認するため,クォーク管理システムのプロトタイプを作成し,データ/制御フローと状態遷移でモデル化された仕様を出発点とする細粒度の設計プロセスを追跡する実験を行なった.その結果,クォークの一貫性検査に基づくイベント-ファンクション連鎖や等価データの簡約,データの設定-参照の一貫性検査,積和を用いた条件の集約,アクションの詳細化など,これまでの設計方法論では示されていなかった詳細な設計規則を定式化し,それに基づくきめ細かい設計支援が可能となることが明らかになった.
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