研究概要 |
ジャストインタイム(JIT)生産方式は,多品種少量生産の状況下において,徹底的な無駄の排除によるコスト低減と高流動生産を実現した革新的な生産システムである.JIT生産システムの基本は,後工程引き取り,後補充生産方式,すなわち引っ張り方式であり,その情報伝達媒体としてかんばんが使用され,各工程でかんばん枚数を決めることによりシステムは自律分散的に機能する.他方,MRP(資材所要量計画)は,1960年代にIBMにより開発され,世界中に普及した生産方式であり,生産すべき製品の基準生産計画に基づき部品展開を行い,発注・生産指示により部品から完成品までを時間単位で管理する方式であり,押し込み方式である.また,OPT(最適化生産技法)は,1970年代にイスラエルで開発された生産方式であり,ボトルネック工程の利用率を最大化し,リ-ドタイム短縮,最適在庫水準の維持等の目標を達成する最適スケジュールを導くことを目標としており,MRP同様,押し込み方式である. 本研究では,計算機・通信技術,生産技術の技術進歩を考慮し,次世代生産・物流システムを,JIT,MRP,OPTをはじめ,提案されている様々な未来型生産システムに基づいて構築し,その可能性を調査した.しかし,今日の激変する状況下において押し込み方式による生産システムでは,変化する環境に追従できず,次世代生産・物流システムとしては,各工程が自律分散的に機能する自律分散型生産・物流システムが有力となる.実際,1990年にMITは全世界の自動車生産システムを調査し,JIT生産システムに基づいて,リーン(lean)生産システムを提唱している.したがって,計算機・通信分野における技術革新を取り入れ,柔軟性,拡張性のある自律分散型システムとしてJIT生産システムを革新すれば,次世代生産・物流システムとしてあるべき未来形につながるものと期待される.
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