雲仙普賢岳のメラピ型火砕流のコンピュータシミュレーションを行うためのプログラムを開発した。プログラムの概略は次のとおりである。 岩塊を表わす球が急崖から落下し、以後この岩塊は時間とともに斜面上を跳躍またはすべりモードをもって転落する。球はある閾値を越える速度で斜面または岩塊同志が衝突すると2個に割れる。割れた岩塊(岩片)に相当する2個の球の運動も第1の球と同様のやり方で計算される。2個のそれぞれが上の条件が満たされるとき2個ずつに割れる。こうして割れた岩片のそれぞれは割れる前に持っていた運動量を保存するほかに、衝突のエネルギーの一部を使って互いに離れるように運動する。こうして各岩片の運動が次々に計算され、それらの大きさまたは速度が仮定された閾値を下回ったとき計算は停止され、その岩片はそこに止まったものとされる。 噴煙を引き起こすエネルギーは割れた岩片のサイズに比例すると仮定され、Morton et al.(1956)の式により噴煙の上昇高さが計算され、雲仙普賢岳で観測された噴煙の上昇高さと比較される。 一連の試みの結果、岩塊同士の衝突による割れは仮定しない方がよいことがわかり、この仮定を取り除き、岩塊が斜面と衝突したときのみ割れるように改めた。すべりの摩擦係数、衝突時の反発係数など、計算に必要な定数を試行錯誤的に決めることにより、雲仙普賢岳で観察された火砕流の到達距離、所要時間などの観察結果をほぼ満足する計算結果が得られるようになった。
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