研究概要 |
本研究はプラズマから外部へ流出するエネルギー束を,局所的に時間分解よく,かつ弾力的に計測するためのカロリメータを開発し,実際の熱流制御実験に適用することを課題としている。そのアイデアはプローブ先端部のバイアス電位を可変とし,そこに流入するプラズマエネルギー束を,先端部の温度の赤外線計測により評価しようとするものである。この課題を達成するため,ラングミュアプローブと同サイズのコンパクトなカロリメータプローブを作成した。その構造はつぎのとおりである。 プローブの先端は直径8mmのSUS円筒を軸に対して45度で切断し,裏側を黒染にした厚さ0.1mmのSUS薄板を溶接して検出部とする。この薄板の磁場に対する角度を変えて,指定した方向のプラズマ熱流を受ける。この受板の薄さによって表裏間の熱伝導時間を3msec程度に短縮することができた。このプローブ先端部は直径18mmのSUS製シャフトの先端に絶縁して固定されており,外部から挿入位置とバイアス電位の制御が可能である。 薄板の裏側には銅・コンスタンタン熱電対を溶接してゆっくりした(基準)温度計測機能を持たせている。一方,同じく薄板の裏側に,赤外線光伝導ロッド(HOYA-SCHOTT社LST-IR-1000mm)を近接して固定し,薄板の温度変化に短時間で追随する赤外線放射を集光する。この赤外光は18mmシャフトの中を通して大気中に導き出し,電子冷却のPbS素子(浜松ホトニクスP4638)で受光・検出する構成とした。赤外線検出出力と温度変化の関係は先述の熱電対計測を参照して対応づけることができる。 大気中でプローブ先端を瞬間的に熱して,このプローブの応答をテストすると,赤外線センサー出力波形は5msec以内で応答し,実験時間より長い0.5秒間でザグは許容レベルであった。熱電対の応答も得られていおり,ここまでは予定どおりの成果が得られた。 しかし,プラズマ実験では充分な出力レベルが未だ得られていない。これは熱流レベルが低く,赤外線スペクトルが光伝導ロッドの透過波長域(2μm以下)まで充分短くならないことが原因である。そこで,この部分を超鏡面仕上げした銅パイプに取替えて透過波長を伸ばして,赤外光透過効率を最大で100倍に増強すべく改良中である。
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