研究概要 |
レーザー爆縮プラズマのような高密度プラズマ中の圧縮された単原子,2原子分子,さらにイオン・クラスター模型の最小単位と目される3原子分子内部の電子状態解析を,密度汎関数理論(DFT)に基づくThomas-Fermi-Dirac-Weizsacker(TFDW)統計模型の枠内で実行して来た。 1.圧縮された2原子分子に対するDFT 2原子分子に対する2中心実効ポテンシャルを2次元Kohn-Sham方程式のポテンシャルエネルギー項に初期入力関数として代入し,Poisson方程式と連立させて,反復法により1電子状態を求めるDFTについては定式化のみを行った。研究成果報告書で詳説する。この問題の数値解析はコードの開発が遅れており,まだ実行に至っていない。 2.イオンクラスター模型の定式化と数値解析 本研究の主課題であるイオンクラスター模型に関してはその最小の模型と考えられる3原子分子(3中心問題)に対する定式化を行い,その概要を研究成果報告書で報告する。 この模型の数値解析は,模型自体がすべての対称性を失うため,3次元(独立変数が3個)解析となる。有限差分法に基づくコードは2中心問題旧コードの形式的な拡張として作成できるものの,我々電子物理学研究室のワークステーションでは演算処理が不可能と判断した。大阪大学レーザー核融合研究センターのスーパーコンピュータ利用を計画している。 3.単原子の2温度模型 平成7年度の実績報告書で概説したように,2温度模型は閉殻をなす基底状態イオン芯とそれをとり巻く有限温度の束縛電子気体から成る非平衡模型である。平成7年4月の「第12回レーザー相互作用と関連プラズマ現象国際会議」で反響をえた後,平成8年8月号のJ.Phys.Soc.Jpn.(Vol.65,No.8,pp.2463-2471)に本論文として掲載された。 4.強磁場中でのThomas-Fermi原子の内部構造解析 パルサー表面では10^<12>〜10^<14>G,レーザー爆縮プラズマ中では爆縮の異方性のため10^6〜10^8Gの磁場の存在が予見されている。このような超強磁場中の単原子の内部構造解析を,まず基底状態にある球対称Thomas-Fermi原子に対して実行中である。また交換・相関相互作用とWeizsacker型密度勾配補正を考慮した有限温度・TFDW模型への拡張と,磁化TFDW原子に対するKohn-Sham方程式の数値解析を計画中である。
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