磁化プラズマの対流胞は、2次元の非圧縮性流体の渦の運動を記述するオイラー方程式とは異なって、電子による遮蔽効果の影響で短距離力で相互作用する。したがって、渦の多体系の集団的な挙動と、構成要素である渦の任意の近接した部分系の力学過程が、どのように関わり合っているかを調べることが、乱流の理解にとって重要であると考えられる。こうした視点から、渦糸記述によって以下の研究を行った。 1)コラップスとブ-メラン運動 3つの近接した渦の相互作用には遮蔽効果は効かないので、オイラー渦と同様に振る舞い、ある特別の条件を満たすと自己相似に1点に収束して発散する特異な挙動(コラップス)を示すが、自然におかれた渦がこの特別な条件を満たすことはなく、一般的にはこの条件からずれている。このとき、渦はいったん収束するが、保存則のため広がり始める。ある程度広がると、相互作用の短距離性のため、距離の近い2つがペアになって運動し始め、もう一つは取り残されてしまう。しかし、ペアになった渦はそれらの渦度の符号と大きさが違うので、取り残された渦のところに戻ってきて、再び、3つで収束するが、次にパートナーを変えてひろがり、同じことを繰り返す。即ち、短距離力で相互作用するプラズマの渦はパートナーを変えながら互いの結合を動的に維持していく。渦はペアになって運動することを基本としつつ、たまたま相互作用の範囲内に入ってきた他の渦を運動に巻き込んでペアの交換を行い、新しいペアによる新しい運動をはじめて小集団から離脱し、次の小集団を媒介にして、ペア交換をおこなう。この過程はカオス的である。 2)カオス過程と巨視的秩序 たくさんの渦が励起されている系では、渦はその運動のパートナーを変えながら全体としての渦の存在領域を変えることなく、従って、巨視的には一つの構造が維持されながら、内部的にはいくつかの小集団の生成・消滅が繰り返される描像が得られた。
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