研究概要 |
最近、加速器や原子炉で生成された不安定核を利用して、イオンビーム科学の質的向上、学際的分野での先駆的な研究プロジェクトが提案されている。この短寿命不安定核ビームを高度利用するためには、不安定核の崩壊の基礎データを測定する必要がある。特に短寿命核のβ半減期は、不安定核ビームを用いる場合不可欠である。しかし、短寿命不安定核の半減期は、測定が困難なためデータが少なく、不純物の混入や不感時間、パイルアップの補正が不十分なため、誤差を越えてずれている場合が少なくない。 立教炉や阪大のOKTAVIANを利用して、半減期が20秒から10分程度の短寿命核を生成し、その半減期をパルサーと線源を同時に測るパルサー法、標準線源と試料を同時に測る線源法の基礎特性を調べ、これらの方法を用いて不感時間やパイルアップを補正し、誤差0.1%程度の精度で決定した。測定には高計数率増幅器やラボ社の波高分析器を使用し、統計的精度を改善した。測定した核種は^<16>N,^<19>O,^<20>F,^<91m>Mo,^<97m>Nb,^<138>Cs,^<139>Ba,^<174>Tm,^<203m>Pbで、それらの結果はそれぞれ7.13(3)秒、26.464(9)秒、11.11(4)秒、62.5(4)秒、58.44(27)秒、32.11(8)分、82.75(18)分、5.335(15)分、6.303(26)秒である。これらの半減期測定では、誤差の範囲をはるかに越えてずれているものが多く、評価値と比較した場合、短寿命核になるに従って、今までのデータは長めの傾向にあることが解った。また高崎研の質量分離器を用いた実験では、新同位元素である^<125>Pr(半減期3.3±0.7秒)も発見した。 この研究により短寿命核の崩壊データが決定でき、不安定核ビームの高度利用が可能となり、学際的な先端研究の発展に貢献した。
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