研究概要 |
熱電変換材料の熱電性能は,性能指数Z=S^2σ/κで決まる.ここで,Sはゼ-ベック係数,σは電気伝導度,κは熱伝導度である.熱電材料の性能を向上させるには,上記の3つの因子を制御することが必要になる.この研究では,プラズマ処理によって鉄シリサイド(FeSi_2)などの熱電材料の微細構造制御によって,熱電性能の向上を目指すことを目的とした. 実験では,焼結前の原料微粒子を,シランまたはゲルマンガスの高周波放電によって生じるプラズマに曝すことによって,粒子表面にシリコンあるいはゲルマニウムの薄いコーティング層を作成した.この粉体を焼結すると,シリコンあるいはゲルマニウムを高濃度に含む粒界層が形成され,電気伝導度や熱伝導度を改善することができる.以下に,主な結果を示す。 (1)鉄シリサイド及びシリコンゲルマニウムのいずれにおいても,シランまたはゲルマンプラズマ処理によって,電気伝導度が向上する.ホール測定から,電気伝導度の改善は,キャリヤ移動度の上昇によることが明らかになった. (2)ESR測定によって,プラズマ処理は鉄シリサイド中の不純物マンガンイオンの価数変化を起こすことが明らかになった.また,粒界準位がプラズマ処理によて減少あるいは消滅することにより,電気伝導度の上昇を引き起こしたと考えられる. (3)シランプラズマ処理では,熱伝導度の改善効果はほとんどない.しかし,ゲルマンプラズマ処理では熱伝導度を低減できる. (4)ゼ-ベック係数に対するプラズマ処理効果は,かなり複雑であるが,全体としてはゼ-ベック係数が上昇するように作用する. (5)こうしたプラズマ処理効果は,FeSi_2だけでなくSi-Geでも確認された.プラズマ処理による性能指数の向上は,今回の実験範囲では2〜3倍どまりであったが,プラズマ処理条件の最適化によってさらに向上できる可能性がある.
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