研究概要 |
化石燃料の大量消費によって大気中の二酸化炭素濃度等が増大し、地球温暖化問題や資源枯渇による代替エネルギー問題の解決が国際的にも急務の中,究極のクリーンエネルギーである水素の製造法として光触媒法が最も注目されてきた.しかし,エネルギー効率が著しく低く,触媒が光溶解するなどの難点が多く、未だ実用化の目処は立っていない. 本研究では3種類の酸化チタンや硫化カドミウム等の半導体微粒子に白金1wt%担持し、ビニルモノマーの重合反応を用いた粒子表面のポリマーによる被覆方法,コロイド滴定法を応用してポリビニル硫酸カリウム・グリコールキトサンのポリマーで被覆する方法,ゼラチン・アラビアゴムによる複合コアセルベーション法によるマイクロカプセル化法の3種の方法で粒子の表面処理を行った.ポリマーの被覆状態を走査型電子顕微鏡で観察した後,これらの粒子を炭酸ナトリウム水溶液に懸濁させて500Wキセノンランプを照射し,水の光分解反応による水素の発生量を測定した.その結果,ポリマーで表面処理をしない半導体微粒子あるいはポリマー被覆量が2wt%以上の粒子では水素は全く発生しないか,発生量がかなり少なく,できるだけ薄く,かつ均一にポリマー被覆され,分散性の良好な粒子で大きな水素発生量を示した.酸化チタンではアモルファス型粒子を重合法によってポリアクリル酸ブチルやポリメタクリル酸メチルで表面処理した試料やルチル型粒子をコロイド滴定法で被覆した試料で水素の発生量が多く,硫化カドミウムではコロイド滴定法による試料が最も光触媒活性が高かった。本研究で得られた粒子は光溶解が起こらず,エネルギー効率も高く,しかも紫外光のみならず可視光も利用でき,連続使用が可能な,毒性のない,全く新しい光触媒であり,無尽蔵に存在すると水が太陽光から直接,水素を安価,簡便に製造できる見通しが得られた.
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