研究概要 |
1.無機ポリリン酸塩およびフルオロリン酸塩は,加水分解されてオルトリン酸塩へ変換されるが,触媒が存在すると,著しく速くなる。迅速な分解過程を追跡できるフローインジェクション分析系(FIA)を設計した。このFIAでは,オルトリン酸と選択的に反応するMo(VI)試薬を利用してあるので,オルトリン酸の発色反応が迅速に,定量的に進行する。また,極低濃度のリン化合物(0.1 μ M)も定量できるように,高感度化した。 2.基質であるポリリン酸塩やフルオロリン酸塩と生成物であるオルトリン酸を同時に測定するために,高速液体クロマトグラフィーを設計した。分離系として,イオン交換樹脂(TSK gel SAX)をつめたカラムを用いた。検出系として高温・高圧リアクターを配置したのが,このHPLC系の大きな特徴である。発色するのはオルトリン酸のみであるから,ポリリン酸塩のオルトリン酸への変換とオルトリン酸の発色反応を同時に進行するように,試薬組成の選択とリアクターの温度・圧の調整をした。 3.上記のFIAシステムとHPLCシステムを酵素反応の解析へ応用した。無機ピロホスファターゼ(EC3.6.1.1)とアルカリホスファターゼ(EC3.1.3.1)によるポリリン酸塩とフルオロリン酸塩の酵素分解反応が対象である。これらの反応を速度論的に解析し,Michaelis-Mentenパラメーターを求めた。また,種々の金属イオンや陰イオンによる酵素の活性化や阻害効果をしらべ,さらに触媒機構(活性部位)のモデルを提唱した。 4.上記の酵素反応に関する基礎データを参照して,環境水中におけるリン化合物の動態や富栄養化発現の要因を解析した。金属イオンがリン化合物の酵素分解(転位)反応,ひいては赤潮発生を制御していると推論した。
|