研究概要 |
多摩川下流の塩分濃度の異なる4地点で底泥堆積物を採取し実験に用いた。新たに開発したハイドロキシアパタイトを用いるスピンカラム法によって底泥試料から核酸を抽出精製した。得られた核酸は分光学的検査から、有機物含量が多い底泥ほど純度の高い核酸が得られたが、いずれに底泥から得られた試料でも、その後のハイブリダイゼーションにはほぼ支障無く用いることができた。抽出した核酸をメンブランに固定し、放射性リンで標識した7種のオリゴヌクレオチド・プローブ(全細菌と硫酸還元菌の属または群特異的)とハイブリダイゼーションを行い、オートラジオグラフィー後、シグナルの強度をデンシトメーターで測定した。既知細菌種のRNA量とハイブリダイゼーションのシグナル強度との検量線から、全細菌、硫酸還元菌の各属のRNA量を求めた。底泥中の全細菌に占めるグラム陰性硫酸還元菌の比率は、塩分濃度が高くラジオトレーサー法で測定した硫酸還元速度の高い底泥で高い値を示した。底泥中に検出された主な硫酸還元菌はDesulfobulbus,Desulfobacterium,Desulfobacterの3属で、塩分濃度の低い地点の底泥ではDesulfobulbusが比較的多く、海洋性のDesulfobacterは検出されなかったが、塩分濃度の高い地点の底泥では、逆にDesulfobacterが優占する傾向を示した。調査したいずれの地点でも、培養法でよく検出されるDesulfovibrioが認められなかった点は注目される。以上の結果から、16SrRNAプローブを用いる定量的スロット・ブロット法は底泥中の活性のある硫酸還元菌の種類組成を属レベルで明らかにすることが可能な有力な手法であることが認められた。
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