研究概要 |
平成7〜8年度に行われた本研究では、北太平洋亜寒帯(Station SA)およびベーリング海(StationAB)にて1990-1995年の期間中に得られた時系列セディメント・トラップ試料を用いた分析を推進した。トラップ試料中のC,H,N,CaCO_3,オパール等の科学分析に付け加え、珪藻、円石藻、レデイオラリア、浮遊性有孔虫等各群集の生物源粒子フラックスに関する実験室での計測を進めた。珪藻に関しては、本格的な計数を推進することができた。円石藻に関しても主要種の計数を進めた。また、レデイオラリアおよび浮遊性有孔虫に関しては、群集組成の解析に留まらず、上記植物性プランクトンとの定量的比較をするために、重量計測も行った。これらの研究結果を化学分析の結果と合わせて解析を進め学会・論文発表を行った。 地球環境の温暖化等の変化は、人類の今後の盛衰をも支配する懸念がある。全海洋面積に占める割合も大きく、地球環境にとって重要な外洋域の中で、生物生産性および炭素や珪素の物質循環に深く関わる海域で粒子フラックスの挙動を研究は重要である。本研究では、中部北太平洋亜寒帯およびベーリング海において生物原粒子フラックスを測定したが、その結果以下のことが明らかになった。これらの海域ではバイオロジカルポンプが効果的に働いている。大気中の炭酸ガスは海洋表層に取り込まれ、その炭酸ガスは植物性プランクトン(主に珪藻)により固体有機物質となり、やがて深海に沈降して下向きの物質輸送を行う。従って、現在懸念されている地球温暖化の観点から、これらの海域での今後の物質循環の動向を正しく把握することが、地球環境の未来を予想する上からも重要である。
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