研究概要 |
C3H/Heの雄マウスに放射線を照射し、これにC57BL/6Nの雌マウスを照射直後、3週間後および11週間後の各々の時期に1週間の間交配した。これらの交配により生まれたF1マウスは、父親の生殖細胞が精子期、精子細胞期および精原細胞期の時期に放射線照射を受けて生まれた子供となる。放射線の線源は^<60>Coγ線を用い、その線量は0Gy,1.0Gy,2.0Gy,3.0Gyとした。これらのマウスtailよりDNAを抽出し、サウザン法を用いてミニサテライト遺伝子Pc-1の変異を解析した。精子細胞期の生殖細胞が放射線照射に対し最も感受性が高く、その突然変異率と線量との間に線量・効果関係を認めた。この場合のPc-1遺伝子座の父親側alleleの突然変異率は、0Gy,1.0Gy,2.0Gyおよび3.0Gyの照射に対し、それぞれ9.1%,22%,28%,および28%であった。 同様の実験を、^<252>Cf中性子を用いて行った。γ線の場合と同様、精子細胞期の生殖細胞が^<252>Cf中性子照射による突然変異の誘発に最も強い感受性を有した。この時の^<252>Cf照射による父親側alleleのPc-1遺伝子の変異率は、線量0.35,0.7および1.02Gyに対し、18%,26%および24%であった。Pc-1遺伝子座における^<252>Cf照射による変異誘発のγ線に対するRBEを計算すると、精子期、精子細胞期、および精源細胞期でそれぞれ5.9,2.6,および6.5であった。 以上のことから、われわれはミニサテライトPc-1の生殖細胞での変異をサウザン法により定量化することにより、放射線による生殖細胞突然変異を調べるモニター系が開発できたと考える。
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