研究概要 |
Kasaki(1964)によって約30年前にシャジクモ類の分布が調べられた琵琶湖を始め小川原湖,芦ノ湖,十和田湖などの湖沼で,高等の沈水植物とともにシャジクモ類の分布調査と,照度,底質,水質等の環境条件の測定を行った. その結果,小川原湖では過去に記録のある数種のシャジクモ類(Nitella hyalina, Chara braunii, Chara globularis var. globularisなど)が,現在も旺盛に生育しているのが確認できたが,沈水植物帯全体の分布下限が浅くなっている可能性が見いだされた.しかし,芦ノ湖や十和田湖では,Chara globularis var. globularisやNitella flexilis var. flexilisなどが見いだされたものの,底質が泥地化していた地点でのシャジクモ類の発見確立はきわめて低かった.潜水調査を行った琵琶湖では,Chara globularis var. globularisのシャジクモ帯とも呼べる植生帯を一部の地域で確認した.それは泥地を好む外来種のコカナダモの分布下限付近(水深5m)で,しかも砂地が維持されているという,非常に特異な立地であった. シャジクモ類が採取された地点の底質はいずれも粒径が大きく,湖底の泥地化とシャジクモ類の減少の関係が推察された.まだ分析サンプル数は多くはないが,蛍光X線による植物体の成分分析を行った結果,深水性のChara globularis var. globularisやNitella flexilis var. flexilisは浅水性のNitella hyalinaなどに比べP濃度などが高くなる傾向がみられ,富栄養な底質を指標している可能性が考えられた.
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