研究概要 |
異常増殖した有毒植物プランクトンの増殖抑制対策として、大型水生植物が代謝した生理活性物質を用いた方法がある。この生理活性物質は生物由来の物質であるため、実際に使用した場合でも生態系への影響はほとんどないことが予期される。 本研究では、生理活性物質を用いた植物プランクトン増殖抑制方法の基礎的検討として、9種類の大型水生植物を用いて有毒藻類である藍藻類のPhormidium tenue,Anabaena flos-aquae, Microsystis aeruginosa に対する増殖抑制効果を水生植物との共存系で評価した。その結果、ホザキノフサモ、エビモがいずれの藍藻類にも著しい増殖抑制効果を示した。ホザキノフサモを対象として、ホザキノフサモを培養した溶液を各藍藻類の培地として、半連続供給を行ったところ、明らかな増殖抑制効果を示し、ホザキノフサモの現存量と増殖抑制効果との間に用量-作用量関係が認められた。 また、ホザキノフサモのメタノール抽出画分において、HPLCを用いて分画し、その画分の藍藻類への増殖抑制効果を評価したところ、ある画分において特異的に増殖抑制効果が認められた。この画分は、HPLCによる保持時間から没食子酸(gallic acid)であることが推定された。さらに、上に示したホザキノフサモ培養液を濃縮抽出した結果、微量であるが、保持時間から没食子酸であることが推定された。タンニン系物質であり、pHや酸素条件などにより影響を受けやすいことが認められた。また没食子酸による藍藻類の増殖抑制効果も認められた。このように、水生植物は没食子酸と推定される物質を含んでいるとともに体外に代謝し、藍藻類を抑制することが予想された。
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