研究概要 |
糖誘導体の閉環反応は高度に官能基化された炭素環化合物の合成に有用な方法で,広範な研究が行われている.最近,報告者は二ヨウ化サマリウムを用いるケチルラジカル環化反応が,カルボニル基近傍の水酸基と三価のサマリウムカチオンとのキレーションにより完全に立体制御される現象を見出した.そこで、この新しいタイプの立体制御法を糖誘導体に適用し,高度に官能基化された炭素環化合物の効率的で立体選択的な形成法を確立することにした.近年,二ヨウ化サマリウムなどの低原子価希土類金属を使う炭素-炭素結合生成反応が活発に研究されている.しかしながら,糖誘導体に適用された例は比較的少数である.まず、二ヨウ化サマリウムを使い、グルコース誘導体の環化反応を試みた.ケトン-オレフィン-カップリングによる6員環形成の際に分子内の水酸基により反応の立体選択性が完全に制御できた.また,ガラクトース誘導体についても同様の分子内還元カップリング反応を行った.この場合も分子内の水酸基により環化反応は立体制御され,6員環が立体選択的に構築された.また,ラジカル-アクセプターを換えることにより,先程の6員環閉環反応の場合とよく似た構造を持つグルコースおよびガラクトース誘導体のいずれからも5員環が高立体選択的に閉環できることも分かった.この閉環反応を用い、近年注目されているキチナーゼ阻害剤,アロサミヂンのアミノシクリトール部分であるアロサミゾリンの重要合成中間体を高立体選択的に合成した.
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