研究概要 |
実用的な糖鎖合成法の確立を目指し,固相合成法による糖鎖の迅速合成について検討した。まず糖鎖合成の基本となるグリコシド化法について検討し,チオグリコシドにN-ブロモコハク酸イミド(NBS)と強酸塩の組み合わせを作用させる方法に加え,N-フェニルセレニルフタル酸イミドとMg(ClO_4)_2の組み合わせを用いる手法を開発した。PhIOとルイス酸から調整される超原子価ヨウ素反応剤を作用させる方法についても検討を行い,PhIO-SbCl_3-AgClO_4,PhIO-TMSClO_4,PhIO-Mg(ClO_4)_2などの組み合わせが高収率で対応するグリコシドを与えることを見い出した。いずれの手法についても6位にトリクロロエトキシカルボニル(Troc)基が導入された供与体を用いることで,高いα-選択性を達成することができた。 糖鎖の固相合成を確立するためには水酸基の保護基ならびに糖を固相に繁げるリンカーの開発が不可欠である。我々の開発したアシルアミノベンジル基がDDQによって脱保護できることに着目し,スペーサー部を導入したグルタリルアミノベンジルリンカーを開発した。さらに硝酸セリウムアンモニウム(CAN)酸化で切断せきるリンカーとして4-グルタリルアミノフェニルグリコシドを開発した。 我々は新しい保護基として3-クロロ-4-アジドベンジル基を開発していたが,これが固相合成に適用可能であることを示した。3-クロロ-4-アジドベンジル基はPh_3PとDDQを作用させることで容易に切断できる有用な保護基である。 さらに以上の成果をもとに固相上でのグリコシド化反応について検討した。その結果,反応速度は液相中での反応に比較すると若干劣るものの目的のグリコシド化が進行した。
|