研究概要 |
当研究室ではこれまでに、西洋タンポポ(Taraxacum officinale)培養細胞より完全な植物体を再生させ、再分化に伴いトリテルペン成分の構成や含量比が大きく変化することを明らかにした。トリテルペン生合成の最初のC_<30>化合物であるスクアレンは、C_<15>のfarnesyl diphosphate(EPP)2分子より生成するが、FPPはスクアレンの他にもセスキテルペンを始めとするきわめて多様な生合成分岐の中心に位置しており、その代謝調節には大きな関心がよせられる。本研究は、西洋タンポポ培養細胞においてFPP代謝に関わる酵素の中、とくにスクアレン合成酵素(SQS)の部分精製についてのべる。 培養細胞から調製したミクロソーム画分(160,000g pellet)より、[1-^3H]FPPから放射性のスクアレンを生成する活性が検出された。反応にはNADPHまたはNADHと、Mg^<2+>が必要で、NADPHまたはNADHを加えないと、スクアレンとは異なるRf値に放射性生成物が認められた。3週間の培養期間中、成長は15日目、SQS活性は10日目で最高になった。 培養細胞から調製したミクロソームをEGTAで処理後、界面活性剤(OTGP+GDC)を用いて可溶化SQSを回収した。ついでSP-Sepharose, Q-Sepharose, Bio-Gel HTPを連結したジョイントカラム、Bio-Gel HTP, Q-Sepharoseの順にクロマトグラフィーを行い、最後にFPLC Superdexにより精製を試みた。Bio-Gel HTPまでの段階で粗ミクロソームでの活性が約55倍まで濃縮された。しかし、Q-Sepharoseの段階では活性が減少した。FPLCではタンパク量が非常に少量となり比活性の算出はできなかったが、SQS活性はいくつかのフラクションに明らかに検出された。
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