研究概要 |
さまざまな生理活性を示すランチオニン含有ペプチドについて,最近単離構造決定の報告をしばしば見かけるようになってきた.このランチオニンペプチドについては,一般的合成法となるものは確立されていない.化学的には,ランチオニン環形成反応,デヒドロアミノ酸導入反応などかなり難しい反応があり,この方法をそのまま他のペプチドに応用することは至難の業である. そこで我々は,ヒドロキシアミノ酸およびシステイン残基を含む直鎖ペプチドを固相合成もしくはリコンビナント合成しておいて,上記の2アミノ酸残基間での脱水縮合反応を行う酵素を用いて一挙に目的のランチオニンペプチドに導く合成法の開発に着手した.この方法は,ランチオニン含有ペプチドの生合成機構を参考にしたものである. これまでの放線菌、乳酸菌についてのスクリーニングの結果より、放線菌の一種であるStreptomyces kentuckensis AKU2705菌体抽出物から、硫酸アンモニウム沈殿、セルロースチューブを用いた透析、イオン交換、ゲル濾過などのクロマトグラフィーによる精製を行って、本酵素の単離を完成させた。 次に、本酵素反応の基質要求性を調べるために、ナイシンプロペプチド(1-22)および、ナイシンA環ペンタペプチド保護体、また酵素反応に関与すると予測されるSer,Thr残基をD型に置換したナイシンプロペプチド(1-34)を合成し、これらの基質とall-L型ナイシンプロペプチド(1-34)との比較実験を行った。その結果、ナイシンプロペプチド(1-22)からは予想通りランチオニンが生成したが、D型置換ナイシンプロペプチドは酵素反応の基質とはならなかった。 このことから、本酵素は分子の大きさを認識し、ある程度以上の長さのペプチドしか基質とはなり得ないこと、酵素が反応点の立体構造を認識することが明らかになった。さらに、本酵素反応の最適化について検討を加えた。
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