研究概要 |
新規酵素KDNase SMの酵素学的諸性質、構造を解明する目的で、酵素の完全精製、精製酵素をもちいた酵素反応の速度論的解析を行い、以下の成果を得た。分子クローニングを目指した実験については、タンパク質の部分配列決定を行い、合成ヌクレオチドプローブの合成が行える段階に達した。 1.Sphingobacterium multivorum由来KDNase SMの完全精製:本酵素は誘導酵素であること、浸透圧ショックにより菌体から収量良く遊離されることをつきとめた。誘導には遊離のKDNでなく結合型KDNを炭素源にする必要であることが判明し、KDN糖タンパク質を含むニジマス体腔液のアルカリ還元処理物が有効な誘導試薬として使えることがわかった。これらの準備段階を経て、KDNase SMをタンパク質として均一になるまで精製することに成功した。その成果は、学術雑誌に発表した(印刷中)。 2.KDNase SMの酵素学的解析:精製酵素を用い、酵素反応の速度論的解析を合成および天然基質、また阻害剤を用いて行った。Dr.M.von Itzstein教授(モ-ナシュ大学・オーストラリア)から恵与された2,3-デヒドロ-2-デオキシノノン酸(KDN2en)が遷移状態アナログとして強い阻害活性をもつことが判明した。本酵素は、シアリダーゼの強力な阻害剤である2,3-デヒドロ-2-デオキシ-N-アセチルノイラミン酸(Neu2en5Ac)により全く阻害されないことから、本酵素が炭素5位の水酸基の認識が重要であることがわかった。
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