研究概要 |
1.ヒト赤血球サイトゾルより精製した分子量180,000のプロテインホスファターゼ2Aは,34kDaの触媒サブユニットαと63および74kDaの調節サブユニットβ,δを各1分子ずつ含有する。74kDaδサブユニットの部分アミノ酸配列を決定し,ヒト大脳皮質および骨髄cDNAライブラリーよりδサブユニットのcDNAを単離した。このcDNAは570残基のアミノ酸より構成される分子量66,138の蛋白質をコードしており,大腸菌に発現させるとδサブユニット特異抗体と反応する約74kDaの蛋白質が検出された。推定される1次構造にはAキナーゼおよびCキナーゼによるリン酸化コンセンサス配列,核移行シグナル,プロリンリッチ領域,プロリン・グルタミンくり返し配列が認められた。δサブユニットのmRNAは約2.9kbで成熟ラットの調べた全ての組織(脳,心臓,肺,肝臓,脾臓,腎臓,腸,精巣,骨格筋)で検出された。 :2.成熟ラットにおけるδサブユニットの組織分布をウエスタンブロット法で調べた。赤血球,脳,肺,精巣,副腎,心臓,脾臓,腎臓,肝臓のサイトゾルにδサブユニット特異抗体と反応する72kDa蛋白質が検出され,この内,脳における含量が最も多かった。骨格筋,腸ではほとんど検出されなかった。 3.δサブユニットの機能をホロ酵素α_1β_1δ_1の解離,再構成により解析した。部分精製したα_1β_1δ_1をヘパリン-セファロースカラムを用いてα_1β_1とδに分離した。両者を0.4M塩化ナトリウム存在下で氷中で混和すると,ホロ酵素が再構成された。各種リン酸化基質に対するα_1β_1のホスファターゼ活性はδが結合することにより20-64%抑制され,α_1β_1およびα_1β_1δ_1の分子活性から推定されたδの機能を裏付けた。
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