研究概要 |
PFK-2/F2,6Pase(6-Phosphofructo-2-kinase/Fructose-2,6-bisphosphatase)は,解糖系の律速酵素の一つであるPhosphofructokinaseの最も強力な活性化因子であるFructose-2,6-bisphosphateの合成(PFK-2)および分解(F2,6Pase)を触媒する二機能性酵素である.哺乳動物の本二機能性酵素は各臓器で構造が異なり,肝・骨格筋型,心筋型,精巣型アイソザイムなどが報告されており,臓器特異的な遺伝子発現機構と連関した本酵素の糖代謝調節における役割の解明が期待されている.本研究では,極めて特異な臓器である胎盤の二機能性酵素はどのような構造と特性を有しているかを明らかにするため,ヒト胎盤から本酵素のクローニング,その発現ベクターの構築,発現酵素の精製および諸性質の解明を行った. ヒト胎盤cDNAライブラリーのスクリーニングおよび5'-RACE法により本酵素アイソザイムの全構造をコードするcDNAの塩基配列を決定した.推定アミノ酸配列から,このアイソザイムはこれまで報告のなかった新規アイソザイム(胎盤型アイソザイム:HP2Kと命名)であることが分かった.HP2K-cDNAを組み込んだ発現ベクター(pBSSK(^+)/HP2K)を構築し大腸菌BL21(DE3)にトランスフォームし過剰発現させる条件を確立し,発現タンパク質をSDS-PAGEで単一バンドに精製した.精製酵素は,分子量58000のサブユニットからなるホモダイマー構造を有し,他のアイソザイムと同様キナーゼ及びホスファターゼ活性を合わせ持つ二機能性酵素であったが,ホスファターゼ活性は,他のアイソザイムと比較すると極めて低いことが特徴的であった.発現酵素は,プロテインキナーゼAおよびCにリン酸化され,またFructose-2,6-bisphosphateにもリン酸化されることなども明らかとなった.これらの胎盤型アイソザイムの特性から,本酵素の胎盤における役割について考察した.
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