研究概要 |
イソプレノイド修飾タンパク質生合成での脂質前駆体合成を司るファルネシル二リン酸合成酵素(FPP合成酵素)とゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素(GGPP合成酵素)の精製法をウシの大脳を原料に確立することができた。ブチルトヨパールを用いる疎水クロマトグラフィーによって、大脳の粗抽出液のFPP合成酵素とGGPP合成酵素を相互に分離した後、前者は、ゲラニルメチルホスホノホスフェートをリガンドに用いるアフィニティークロマトグラフィーと更にMonoQを用いるイオン変換クロマトグラフィーによって、また後者はファルネシルメチルホスホノホスフェート用いるアフィニティークロマトグラフィーと更にMonoQを用いるイオン交換クロマトグラフィーによってそれぞれ単一に精製された。FPP合成酵素とGGPP合成酵素の比活性はそれぞれ1,070nmol/min/mgと294nmol/min/mgであった。この比活性の値は、高等生物臓器(ウシの大脳)に発現している二種のプレニルトランスフェラーゼを比較した初めてのものである。これら単一に精製されたFPP合成酵素とGGPP合成酵素の抗体をモルモットで作成した。これらの二つの抗体はそれぞれの抗原のみを認識した。抗FPP合成酵素抗体を用いてのウシの肝臓と大脳それぞれの粗酵素のウエスタンブロット分析では、どちらの臓器にも共通にみられる約40kDaポリペプチドを検出したが、大脳では約140kDaのポリペプチドも検出された。一方、抗GGPP合成酵素抗体を用いる同様のウエスタンブロット分析では、肝臓と大脳において約170kDaのポリペプチドが検出された。これらの結果はこの二つの酵素の細胞内での新奇な存在形態を示唆する。
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