研究概要 |
プチダレドキシン(Pdx)はシトクロムP450camと1:1の複合体を形成する。この複合体の還元型P450camにCOを結合させると還元型PdxのEPRスペクトルが有意に変化する。この変化は配位子が結合したことによる構造変化がシグナルとしてP450cam分子内部から表面に及び、更に複合体の相手(Pdx)にまで伝わった結果と結論される。これは配位子結合による構造変化が分子表面にまで及ぶことを示す最初の例である。 そこで、この複合体における両蛋白質間の協同性がどのようにしてこの複合体の構造変化を引き起こすのか、電子伝達はどのアミノ酸を介して行われるのか、P450活性に重要なアミノ酸残基(R112,D251,T252)をアミノ酸置換法により培養・分離・精製した試料を用い、その置換効果を複合体形成条件下で検討した。 ヘム遠位側でヘム鉄に結合した酸素分子への電子伝達に寄与する251番のAsp(D)残基や252番のThr (T)残基を置換した変異体では天然型に見られた変化と同様の構造変化に伴うEPR変化が見られたのに対し、Pdx結合部位と密接な関係にあると考えられている112番のArg (R)残基を置換すると上記のシグナル伝達によるEPR信号変化が見られず、このシグナル伝達にはR112残基が重要な役割を有する事、しかもR112→K (Lys)変異体の時でもシグナル伝達が見られなかった事から、この残基の持つ正電荷以外の「他の構造因子」も伝達に必須であると結論される。更に、PdxのEPR信号変化と「鉄-イオウ」クラスターの配位構造との相関を調べる為、種々のPdx変異体を用いてEPR測定・解析を行い、EPR信号変化を引き起こす「鉄-イオウ」クラスター近傍のアミノ酸部位を特定出来た。本研究は慶應大学医学部医化学教室(石村巽教授)の全面的な協力によって行われ、現在論文を製作中である。
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