研究概要 |
マウスの2細胞期は受精後初めて胚由来の遺伝子の活性化(zygotic induction)が認められ,その後の発生の進行に関わるさまざまな遺伝子が活動としていると思われるが,明かにされたものはほとんどない.本研究はいかなる遺伝子がこの時期に発現し,どのような特徴的な構造と働きを持っているかを解明することを目的として,2つの角度からアプローチした. 1.マウス初期胚で高率に発現されている反復配列B1(130bp)を含むcDNAクローンの解析.約100個の塩基配列決定から(1)2細胞期に発現する特異的なB1配列はない.(2)mRNA上の方向性に法則性はない.(3)多くはmRNAの非翻訳領域に存在する.ことが明かとなった.また結果的に典型的なB1反復配列はなかたが,染色体上のヘテロクロマチン領域の遺伝子発現調節に関わると思われる遺伝子M32(およびM31)と2細胞期のcDNA,2B1-30のホモログとして成体マウスの精巣特異的に発現するtsec-1,tsec-2遺伝子について,そのcDNA構造と発現パターンを詳細に明かにした. 2.2細胞期に高い発現を示す未知遺伝子SSEC-D(Stage-Specific Embryonic Clone-D)の解析.(1)実験用マウスでは遺伝子座は2つ(一つは偽遺伝子座),少なくとも3つのエキソンからなり,げっ歯類,霊長類で特によく保存されている遺伝子である事を解明した.(2)900ntdsのRNAの発現は成体マウスのすべての組織で強く,このRNA長がおそらくは3'へのpolyAの付加により,受精後15時間前後で一過性に約400ntds大きくなる事を発見した.この遺伝子は2細胞期の遺伝子発現調節のマーカー遺伝子として極めて注目できると共に,調節そのものに関わる可能性を期待させる.今後,以上の仕事を手がかりとしてさらにもう少し系統的な解析を発展させたい.
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