研究概要 |
活性酸素に対する防御機構を系統的に明らかにするため、哺乳類培養細胞(CHO.K1)から活性酸素高感受性変異株を多数分離した。変異株には少なくとも4つの相補性群が存在することが明らかになった。 1)相補性群I(Pal3)とII(Pb4)は、DNAクロスリンク剤であるMMCやcis-DDPに感受性が高いことから、Fanconi貧血症C群が座位するヒト第9染色体を、A9his9p8(histidinol耐性マーカー付き)より調整した微小核との融合により移入した。PAl3とPb4からそれぞれ4株づつのHybridを得、それらのMMCならびにcis-DDP感受性を調べた結果、いずれも元の変異株と同程度の感受性を示し、変異は9番染色体により相補されず、これらの変異はFAのC群とは異なると推定された。 2)Pb4の亜株(HPRT^-)とヒト正常二倍体細胞TIG7を融合し,雑種細胞を選択した。Alu-PCRによりヒトDNAを含むクローンを2個(4H1,4H2)選別した。4H1はMMCに対し野生型の耐性を,4H2はやや弱い耐性を示した。各クローンとも10本前後のヒト染色体を保持していた。4H1クローンをコルセミド処理し,染色体の脱落したMMC耐性サブクローンを単離した。調べた7個の全てに共通して残存したヒト染色体領域のうち,4H2およびそのサブクローンにも存在していた染色体領域は,15q,20q,22qのみであった。活性酸素の消去に関わる遺伝子として,Cu/Zn-SOD(21q22.1),Mn-SOD(6q21),細胞外SOD(4p16.3-q21),カタラーゼ(11p13),グルタチオンペルオキシダーゼ(3q11-q12)が知られているが,Pb4変異株の原因遺伝子はこれらとは異なるものであることが示唆された。 3)Cu,Zn-SOD,Mn-SOD、カタラーゼについて、4つの相補性群代表株における酵素mRNAの構成的発現を調べた。 その結果、そのレベルには野生株と各変異株の間には著しい差はなかった。
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